安全なパスワードの作り方 — NISC・IPA推奨の長さと文字種

安全なパスワードとは、12文字以上大文字・小文字・数字・記号を組み合わせた、辞書単語や個人情報を含まない推測困難な文字列です。NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)・IPA(情報処理推進機構)・NIST(米国国立標準技術研究所)の各ガイドラインはいずれも「長さ」と「ランダム性」を最重要視しており、無料のパスワード生成ツールを使えば条件を満たすパスワードを即座に作成できます。

最終更新: 2026年5月22日

目次
  1. 安全なパスワードの条件
  2. NISC・IPA・NISTガイドライン
  3. 避けるべきパターン
  4. パスワード解読時間の目安
  5. パスワード生成ツールの使い方
  6. パスワード管理のベストプラクティス
  7. よくある質問

安全なパスワードの条件

定義: 安全なパスワードとは、(1) 12文字以上の長さ、(2) 大文字・小文字・数字・記号の4種類を組み合わせた構成、(3) 辞書に載る単語や個人情報を含まないランダム性、の3条件を満たす文字列です。この3条件をすべて満たすことで、ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)や辞書攻撃への耐性が大幅に向上します。

パスワードの強度は主に「文字数」と「使用する文字の種類数」によって決まります。文字種ごとの選択肢の数(英小文字のみなら26通り、全種なら90〜94通り)が、総当たり攻撃の計算量を直接左右するためです。

強度 条件 評価
8文字以下、英字のみ password 数秒〜数分で解読可能
8〜11文字、英数字混在 Pass1234! 数時間〜数日。使い回しで危険度大
12文字以上、4種類混在 Kp7#mQzX2@nL 現在の技術では解読に数百年以上

「強」の条件を自力で満たすパスワードを毎回考えるのは現実的ではありません。パスワード生成ツールを使えば、条件を指定するだけで瞬時に安全なパスワードを生成できます。

NISC・IPA・NISTのガイドライン比較

各機関の共通メッセージ: 国内外の主要セキュリティ機関はいずれも「長さ重視」「ランダム性の確保」「使い回し禁止」を最重要事項として挙げています。「定期変更の義務化」については、最新ガイドラインでは必須要件から外れています。

NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)

日本の政府機関のサイバーセキュリティ政策を担うNISCは、2023年度版「インターネットの安全・安心ハンドブック」において、以下の指針を示しています。

  • 英大文字・英小文字・数字・記号を組み合わせた10文字以上のパスワードを設定する
  • サービスごとに異なるパスワードを使用する(使い回し禁止)
  • パスワード管理ツールの活用を推奨
  • 「パスワードは定期変更するより、強力なパスワードを使い続ける方が安全」と明記

IPA(情報処理推進機構)

IPAは「情報セキュリティ10大脅威」や「パスワードの定期変更に関する見解(2024年改訂)」でパスワード管理のベストプラクティスを公開しています。主なポイントは次の通りです。

  • 「できるだけ長く、予測が困難なパスワード」を推奨。具体的な最低文字数として10〜12文字が目安
  • 多要素認証(MFA)の導入を強く推奨
  • 漏洩情報照合サービス(Have I Been Pwned等)の活用を推奨
  • パスワードの定期変更は「漏洩が疑われる場合のみ行えばよい」とし、義務的な定期変更を否定

NIST SP 800-63B(米国国立標準技術研究所)

NISTは2017年に発表した「デジタルアイデンティティ ガイドライン」(SP 800-63B) で、従来のパスワードポリシーを大幅に見直しました。2024年の最新改訂版(第4版ドラフト)でもその方向性は維持されています。

  • 最低文字数は8文字だが、15文字以上を強く推奨
  • 最大文字数は64文字以上を許容すべき(上限を短く設けてはいけない)
  • 大文字・小文字・記号の使用を強制することは推奨しない(複雑な規則がかえってユーザーを予測可能なパターンに追い込むため)
  • 定期変更の強制を禁止(漏洩が確認された場合のみ変更を求める)
  • 漏洩パスワードリストとの照合を義務付け
機関 最低文字数 定期変更 多要素認証 ポイント
NISC
(日本)
10文字以上 不要(漏洩時のみ) 推奨 使い回し禁止を最重視
IPA
(日本)
10〜12文字目安 不要(漏洩時のみ) 強く推奨 MFA+パスワードマネージャー推奨
NIST
(米国)
8文字(15文字以上推奨) 強制禁止 推奨 長さ重視・複雑さ強制を廃止

いずれのガイドラインも「長さ」と「ランダム性」を重視しており、実用上の最適解は12文字以上・4種類混在・サービスごとに異なるパスワードです。

避けるべきパターン

危険なパスワードの特徴: 辞書単語・個人情報・キーボード配列・数字の羅列は、攻撃者が最初に試みるパターンです。これらは文字数が多くても意味がなく、辞書攻撃や標的型攻撃で突破されます。

世界で最もよく使われる危険なパスワード TOP5

セキュリティ企業NordPassが毎年公開する「最も使われているパスワード」ランキングでは、以下のパスワードが常に上位に並びます。いずれも1秒以内に解読可能です。

  1. 123456 — 数字の連番。最も一般的で最初に試される
  2. password — 英語圏で圧倒的に多い。日本語圏では「パスワード」のローマ字入力も危険
  3. 12345678 — 8文字あっても連番では意味がない
  4. qwerty — キーボード最上段の左から6文字。キー配列攻撃の代表例
  5. abc123 — アルファベット順+数字の組み合わせ。辞書攻撃で即座に解読される

避けるべきパターン一覧

  • 辞書単語: applesummerdragon など英語辞書に載る単語はそのまま使わない
  • 個人情報: 生年月日(19901015)、名前(yamada)、電話番号の一部はSNSや公開情報から推測される
  • キーボード配列: qwertyasdfghzxcvbn1qaz2wsx などは攻撃パターンに含まれる
  • 単純な置き換え: p@ssw0rd(a→@、o→0)のような置き換えは攻撃辞書に収録済み
  • サービス名の組み合わせ: google2024amazon123 など、サービス名+数字は最初に試される
  • 末尾に数字や記号を追加: password1! のように既存パスワードの末尾に付加するだけでは強度が低い

パスワード解読時間の目安

計算の前提: 以下の表は、1秒間に100億回(1010回)の試行が可能な高性能攻撃環境(GPUクラスタを用いたオフライン攻撃)を想定した解読時間の概算です。オンライン攻撃(ログイン試行制限あり)では実際にはさらに時間がかかります。
文字数 英小文字のみ
(26種)
英大小文字
(52種)
英大小文字+数字
(62種)
全種(大小英数字+記号)
(94種)
6文字 約3秒 約2分 約6分 約49分
8文字 約2時間 約4日 約24日 約7年
10文字 約58日 約29年 約94年 約6万年
12文字 約109年 約7.9万年 約36万年 約5.4億年
16文字 約7.4万年 約2.1億年 約1.4兆年 約4.8京年

表から読み取れる重要な事実が2つあります。第一に、文字数を増やすことが最も効果的です。8文字から12文字に増やすだけで、全種使用時の解読時間は「7年」から「5.4億年」へと跳ね上がります。第二に、文字種を増やすことも有効ですが、文字数の効果の方が指数関数的に大きくなります。

なお、辞書攻撃(よく使われる単語リストを使う攻撃)では文字数に関係なく瞬時に解読されることがあります。上記の時間はあくまで「ランダムな文字列」を前提とした純粋な総当たり攻撃の場合です。

パスワード生成ツールの使い方

Links Create パスワード生成ツールは、ブラウザ上で安全なランダムパスワードを即座に生成できる無料ツールです。生成処理はすべてブラウザ内で完結し、入力値や生成結果がサーバーに送信されることはありません。
  1. 文字数と文字種を設定する
    パスワード生成ツールを開き、文字数スライダーを12以上に設定します。使用する文字種(大文字・小文字・数字・記号)のチェックボックスを必要に応じてオンにしてください。記号が使えないサービスでは記号のチェックを外せます。
  2. 生成ボタンを押す
    「パスワードを生成」ボタンをクリックすると、設定した条件を満たすランダムなパスワードが即座に表示されます。気に入らない場合は何度でも再生成できます。
  3. コピーしてすぐに利用する
    「コピー」ボタンを押してクリップボードに保存します。登録フォームに貼り付けると同時に、パスワードマネージャーにも保存してください。生成したパスワードをメモ帳に書き留めたり、ブラウザの標準保存機能だけで管理するのは避けてください。
  4. 強度バーで NIST 推奨レベルを達成NIST SP 800-63B は最低 8 文字・推奨 15 文字以上を示しています。強度バーで「強い」「非常に強い」レベルに達するまで長さや文字種を調整します。
  5. パスワードマネージャー保存と MFA 併用 — 1Password・Bitwarden・Apple Keychain に保存して自動入力。さらに TOTP (Google Authenticator) や WebAuthn (YubiKey) を 2 要素として組み合わせるのが現代の標準。

パスワード管理のベストプラクティス

管理の3原則: (1) サービスごとに異なるパスワードを使用する、(2) パスワードマネージャーで一元管理する、(3) 重要なアカウントには二要素認証(2FA)を設定する。この3点を実践するだけで、一般的な攻撃の大半を防ぐことができます。

パスワードマネージャーの活用

100以上のサービスアカウントをすべて異なるパスワードで管理しながら記憶することは不可能です。パスワードマネージャーを使えば、1つのマスターパスワードだけを記憶すれば、各サービスの複雑なパスワードを安全に管理できます。代表的なパスワードマネージャーには、1Password・Bitwarden(オープンソース・無料プランあり)・Dashlane・Keeper などがあります。OS標準のiCloudキーチェーン(Apple)やGoogleパスワードマネージャーも選択肢の一つです。

二要素認証(2FA)の重要性

二要素認証とは、パスワードに加えて「スマートフォンの認証アプリが生成するワンタイムコード」や「SMSで届くコード」などを組み合わせてログインする仕組みです。パスワードが漏洩しても、2つ目の認証要素がなければ不正ログインを防ぐことができます。Google・Apple・Microsoft・各種SNS・主要銀行などほとんどのサービスが2FAに対応しています。特にメール・金融・SNSのアカウントには必ず設定してください。

認証アプリとしては、Google Authenticator・Microsoft Authenticator・Authyなどが広く使われています。SMSよりも認証アプリの方が安全性が高く、SIMスワップ攻撃への耐性があるためより推奨されます。

パスフレーズ方式:覚えられる安全なパスワード

「どうしても自分で考えたパスワードを使いたい」という場面では、パスフレーズ方式が有効です。セキュリティ研究者のRandall Munroeが「correct horse battery staple」で有名にしたこの手法は、ランダムな単語を4〜5語スペースや記号でつなげるものです。

  • 例: piano cloud river 482 sunset
  • 例: correct-horse-battery-staple

この方式は20文字以上になりやすく、ランダム性も高いため総当たり攻撃への耐性が極めて高い一方、人間が記憶しやすいという利点があります。ただし、単語を「予測しやすい組み合わせ」にしたり、有名なフレーズを使うと安全性が下がるため注意が必要です。

パスワードの保存方式について(技術的背景)

信頼できるサービスでは、ユーザーのパスワードを平文で保存せず、ハッシュ化という技術を用いて保存しています。ハッシュ化は一方向の変換で、パスワードから計算した値(ハッシュ値)のみを保存するため、データベースが漏洩してもパスワード自体は守られます。パスワードの保存にはbcrypt・Argon2・scryptなど、ブルートフォース攻撃に強い専用のアルゴリズムが使われます。ハッシュ化の詳細はハッシュ化とは? MD5・SHA-256の違いをご覧ください。

よくある質問

パスワードは定期的に変更すべきですか?

漏洩の証拠がない限り、定期変更は必須ではありません。NIST SP 800-63B(2017年改訂)は「理由のない定期変更はかえってセキュリティを弱める」と明記しています。定期変更を義務付けると、ユーザーが「Password1」→「Password2」のような予測しやすい変更パターンをとりがちになるためです。ただし、漏洩が疑われる場合や、共有環境で使ったパスワードは速やかに変更してください。

パスフレーズとは何ですか?

パスフレーズとは、複数の単語をスペースや記号でつなげた長いパスワードです。「correct horse battery staple」のようにランダムな単語4〜5語を組み合わせると、文字数が20字以上になり、総当たり攻撃への耐性が飛躍的に高まります。覚えやすさと安全性を両立できる方式として、NISTも推奨しています。

同じパスワードを使い回すとなぜ危険ですか?

あるサービスでパスワードが漏洩した場合、攻撃者は同じ組み合わせを他のサービスでも試す「クレデンシャルスタッフィング攻撃」を行います。同じパスワードを使い回していると、1件の漏洩が連鎖的に複数アカウントの侵害につながります。実際にHave I Been Pwnedには2026年時点で100億件超の漏洩アカウント情報が収録されており、自分のメールアドレスが含まれているか確認することをお勧めします。

二要素認証(2FA)とは何ですか?

二要素認証(2FA)とは、パスワード(知識要素)に加えて、スマートフォンの認証アプリが生成するワンタイムコードや、SMSで送られるコード(所持要素)などを組み合わせてログインする仕組みです。パスワードが漏洩しても、2つ目の要素がなければ不正ログインを防ぐことができます。重要なアカウントには必ず2FAを有効にしてください。